トップページ  /  業界の裏話

業界の裏話

  立地が悪くても繁盛してしまう街

  人々から全く見えないのに繁盛している店があります。たとえ、人々の動線からまったく離れていようと、TG(交通発生源)から見えなかろうと、お構いなしに売れてしまう店。究極の悪立地で商売繁盛。渋谷や新宿などといった大きな街に、こういう店があります。
ただし、こうしたやり方はどこでも通用するというものではありません。渋谷や新宿には、ちょっとした“口コミ”や冒険心があれば、どんな悪立地でも成功する背景があります。超広域繁華街マーケットということです。ふつうの街ではありえないことも、こうした街では起きるのです。
反対に、いくら看板を目立つように変えて、店舗ファザード(店の正面のデザイン)を改良しても、ほとんど売上げが上がらない店があります。視界性が格段に良くなっていても上がらない。こちらのほうが問題です。
店が演出し求めている客層と、その商圏に集う人々の感性や懐事情がミスマッチを起こしている可能性があるのです。

改装効果が出ない店もあります。
  ・  店内の席数が少ない。
  ・  壁紙が汚れてきている。
  ・  床も傷んでいる。

こういう現状を変えようと多くのファストフード店などは3年〜5年に一度、お金をかけて改装するものです。
  しかし、果たして客数・売上げが伸びるのは、その3割ほどでしかありません。その大部分は、客数も売上げもほとんど伸びないのです。
改装の中身にもよりますが、伸びない本当の理由は「ポテンシャルの固定化」という現象です。店の周辺の人々の行動パターンというのは時間がたつうちにほぼ固定化していきます。 お店に行く人は行く。行かない人は行かない。こうした固定化が起こっているため、改装の効果がそう簡単には現れないのです。

もっとひどい例があります。ある居酒屋のチェーン企業です。

  オープンして3ヶ月たった店が、まったく思った通りに売上げがとれませんでした。このままだと不振店になってしまいます。
そこで、意を決して、その企業はオーナーを説得、全く別の業態に挑戦させました。追加した内装コストは1000万円、で、どうなったのでしょうか。   最初の1〜2ヶ月は順調に売り上げが伸びたかに見えました。しかし、開店景気の3ヶ月が過ぎると以前より低くなってしまったのです。その半年後、赤字に耐え切れなくなってお店を閉めざるを得なくなってしまいました。

  今、一般的に居酒屋系店舗の「旬の期間」は3ヶ月だと言われています。それほど競争は激化しているということです。その3ヶ月を過ぎると、開店景気ではなく、街が本来持っているポテンシャル(潜在力)で勝負しなければならなくなります。
この居酒屋のチェーン企業はこの点を見誤ったようです。開店景気を過ぎて売上げが低いなら、この時点で撤退を考えなければならなかったのです。 立地と業態、くれぐれも見誤ってはいけません。

  視界性・インアウトは売上に無関係?

  先日、車関連の店舗を全国展開している若い起業家社長とお会いしました。
その若社長によると、「どうも店舗の見え易さ、入り易さは店の売上げに関係ないようです」というのです。 ほとんど見えないような視界性の悪い店舗でも繁盛している店が多いとのこと。加えて、売上げ上位店舗の多くが、店前道路に中央分離帯があり、反対側車線からのイン(進入)はほとんどできません。でも売れているそうです。

  売上予測するために必要なデータは、実査で集める立地のデータや統計データです。そして、何よりも立地についての理屈、理論、概念が出発点になります。例えば、視界性評価、インアウト評価といった概念です。

  ところが、上記のような事実を突きつけられると、そうした概念がまったくの無力であるかの錯覚に陥ってしまいます。しかし、売上予測は、「奇」を扱うことではありません。
「常識」的感覚が絶対的に不可欠なのです。仮に、「見えない店が売れている」ということがあっても、「店は見えなければ繁盛する」、あるいは「店は見えなくとも繁盛する」という「奇」に走ってはいけません。

  それはその店で、たまたま、そうした関係が起きているだけに過ぎないのであって、これが「常識」的感覚に反していることは明確です。
そういうことが起きている場合は、冷静になり「もっと別の大きな要因を見逃しているのでは」と考えるべきなのです。

  実際、上記のケースでは、いずれも「商圏の大きさ」という大きな要因が見つかりました。つまり、商圏が大きいからこそ、多少見えにくい、反対車線から入りにくい状況であっても売れているのです。立地の判定、そして売上予測をするには、「奇」を扱うのでなく、「常識」的感覚を大切にしてください。

  立地にあった業態を考える

  ある起業家セミナーで講演したとき、「立地に合わせて業態を考えるのが良いか、それとも、業態に合った立地を探すべきか?」という質問を受けました。
その時、迷わず「前者のほうですよ」、つまり立地に合わせて業態を考えるほうが良いと答えました。 この考えは、今も変わりません。

  すべて規格通りのフランチャイズチェーンに加盟するのだったらいざ知らず、売り方、経営の仕方を自由に決められるのだったら、立地に合わせてどんどんやり方を変えていきましょう。そして、もっとも売れて、もっとも効率の高い方法を見つければよいのです。 そうすれば、1号店は必ず成功します。2号店だって、自由にやればまたうまくいでしょう。

  立地に合わせるとは、店舗前や近隣を行きかう人々、住んでいる人、働いている人の需要に合わせるという意味です。

  最近、弊社の近くの空き地に 自動車屋台が数台とまるようになりました。空き地といっても、本格的な空き地ではなく、ある会社の駐車場です。 ここに11時から14時近くまで屋台がオープンし、弁当を販売しているのです。カレー弁当あり、和食弁当有り、日々さまざまな業態です。 そして、どの屋台も、ほとんどその日の予定分を売り切って帰っていきます。これは、この近くに大きな弁当需要があったことを示しています。

  それまで周りの人々は、コンビニの画一的な弁当か、デパートの高い弁当を買っていました。いや慣らされていたと言ってよいでしょう。 そういう人々の心をがっちりとつかんだのです。600円とか650円でも「安い」と感じる「手作り」の弁当に憧れていたようなのです。

もちろん、ここの立地は会社の駐車場ですので、屋台以外では成り立ちません。これこそ、この立地でのベストのやり方といえるでしょう。

あなたはどこに店を出したいのでしょうか。それが決まったらどんな店にしたいのでしょうか。ぜひ、立地をよくよく見て決めてください。

本ページのtopへ戻る   

  看板らしきものすら見えないマクドナルド

  マクドナルドの立地で面白いところがあります。JR山手線の有楽町駅。
ビッグカメラの出店している西口のやや南の方に、古くからスカラ座という映画館が入っているオフィスビルがあります。

  このビルの1F正面には、マクドナルドの例の正式の看板がありません。もちろん、スタンド型の看板も置いていません。 ビルの横壁に回転式の共同看板があります。そこに2分間に1度くらいの割合でMのマークが映るだけです。だから、「店がある」というより「宣伝マーク」があると感じる人の方が多いでしょう。しかし、マクドナルドはこのビルの地階に実在しています。 それも入り口から最も遠いところにです。

  ビルの正面玄関のガラス扉を開けると、左手に下に向かう階段があります。しかし、マクドナルドの兆候らしきものは何もありません。 本来なら階段を下りたすぐ正面にありそうなものですが、そこには新しいナショナルブランド“スターバックスコーヒー”が鎮座しています。 そこで、右に振り向きます。ありません。左に振り向きます。やはり、ありません。マクドナルドはそのかけらさえも見せません。日曜日の地階は、ほとんどのテナントが閉店しているので、薄暗くて不気味です。そんな幽霊屋敷のような区画を、ただひたすら「マクドナルドがあること」を信じて、とりあえず奥に向かって歩くしかありません。 突き当たりに着きます。右に振り向きます。何もありません。やや不安になりながら、さらに進みます。そこで、左に振り向きます。そこにもありません。こうやって薄暗い中を右や左に、何度も曲がることになります。 もし、事情を知らない他人を連れて行ったら、きっと、いや「必ず」誤解されるに違いありません。「マクドナルドとか言って、本当はいったいどこに私を連れ込もうとしているの」

  そんな小さな疑惑が、大きな不安に変わろうかとするその瞬間、突然マクドナルドが出てきます。パーッと、あのいつもの明るいマクドナルドが出てきます。「ああ良かった。マクドナルドがあってくれた」そんな安心感が身を包みます。いつものあの人々の賑わいが心をホッとさせてくれます。しかし、マクドナルドの右隣は、廃墟のように店内が荒れたまま放置されたラーメン屋の跡。左隣のガラス製の扉には、「閉店いたしました」の文字。こんな場所で誰が商売しようとするものでしょうか。にもかかわらず・・・。

  立地を志す人は、必ず有楽町のこのビルのマクドナルドを見るべきです。そして、立地の恐ろしさを知るべきです。 マクドナルドは30年以上にわたって、立地を研究してきました。その末見つけ出した立地は、「ほとんどの商売では失敗する立地」であって、かつ「マクドナルドなら繁盛させることができる」という特殊立地です。おそらく賃料は二足三文で借りているに違いありません。

  こうしたことは、マクドナルドに限らず、どんなナショナルブランドにも往々にしてあります。だから、個人や新興のチェーン企業は、決して先達の立地を鵜呑みにしてはいけません。自分たちの目と足でしっかりと見極めていかなければならないのです。

  同じ業種業態どうしが激突すると…

  突然、お店の売り上げが下がったとしましょう。その原因は何でしょうか?多くの店長はこう言い訳します。 「競合店の影響だと思います」 確かに、店長の言う通りかもしれません。同業店が自店舗の近くにできれば、影響を受けざるを得ません。では、その影響度合いはどの程度でしょうか?

  これについては、実際の値がわかっています。マクドナルド店が別のマクドナルド店のほぼ隣に出店したことが何度かあります。 その実例です。最初からあった方のマクドナルド店の売り上げは、いつでも30%減少しました。 余談ながら、なぜこんな変わった出店をするのかといえば、契約切れがあるからです。もっと詳しく言えば、契約切れに伴って、大家が法外な家賃を要求してきたり、ビルの立替工事をしたり、特殊な事情が起きることがあるからです。

  さて、この30%という数字。同じ業種業態どうしが激突する時のインパクトの大きさです。その基準と考えてください。 不思議なことは、決して50%ではない、ということです。50%ならば、二店舗で足して元の売り上げになるので合点がいきます。 しかし、50%ではなく、30%というところが妙味なのです。

  これなら、二店舗で足して元の売り上げどころか、140%になっています。なぜなら、(100%−30%)+(100%−30%)=140%だからです。 マクドナルドは店が2店舗できることで、客が40%増えるのです。2倍にはなりません。

  こうやって、同業店ができることによって、全体の客数が増えること。これを「市場拡大」と呼んでいます。つまり、競合しているということは、その背後で、市場拡大が起きているということも意味しているのです。

  競争力を高めれば、同業店が出店してもまったく怖くありません。むしろ、売り上げを上げるチャンスでさえある、ということも言えるのです。「同業店が出店してもまったく怖くありません。むしろ、売上げを上げるチャンスです」と書きました。「そうは言っても先生、やっぱりウチは競合店の影響をモロに受けるのです」と言われたことがあります。

  もちろん、私は競合店の影響がないと主張しているわけではありません。競合店が自社店舗の売り上げにマイナスに作用することは、大方の場合あたっています。 しかし、マイナスに作用するといっても、自社の売上げが半分やそれ以下になってしまうようなことは稀です。ほとんど同じ規模で、そしてほとんど同じ知名度と営業力を持つ同業店どうしが激突した場合、先発している店の売り上げは最大で3割減の影響を受けます。 これ以上影響を受けるなら、営業状況を見直した方が良いでしょう。

  店舗数に応じてどのくらい市場が拡大するか

  同業店が増えることによって、多くの場合「市場拡大」が起きています。この市場拡大の程度は1.4倍程度です。3店が同時に存在する場合は1.7倍です。そして、これは、私の研究結果ですが、N店が同時に存在する場合は、Nの平方根倍の市場拡大が起きているのです。

  これが、「複合インパクト理論」です。これは、大きな商業施設にもあてはまります。大都市の中で互いに切磋琢磨している大型小売店(GMSやショッピングセンター)などのことです。これらの場合は、単に店舗数を見るのではなく、それぞれの施設の売り場面積を見ます。

  つまり、1大都市圏に大型商業施設群(複数)があったとしましょう。そして、ここに、新たな大型商業施設が参入して、全体の売り場面積の合計がK倍になったとしましょう。そうすると、全体の市場はKの平方根倍だけ大きくなるのです。逆のことを言えば、こういう原理が働くから、商業都市が成立するということです。

  商業都市をショッピングセンターと言い換えてもよいでしょう。店どうしが競合ばかりして、こうした市場拡大が起きなければ、商業都市もショッピングセンターも成立しません。それぞれの店が、同じパイを食い合ってしまうばかりです。そのうち採算がとれなくなって共倒れになります。しかし、なかなかそうはならないのは、多くの人が知る通りです。

  ただし、市場自体が大きくなればなるほど、市場拡大は難しくなっていきます。 ですから、市場拡大を武器に戦っていけるのは、まだ立ち上がったばかりの小さな市場や成熟前の市場です。そういう意味で、飲食業や小規模小売店、サービス業、アミューズメント業などは、まだまだ拡大の余地があります。 あとは、どんな特徴ある市場を切り開いていくか、それぞれの開拓者の知恵比べということになります。

本ページのtopへ戻る